白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
念入りに足場を整えて、バッターボックスの左側に立つ稜ちゃん。

・・・・いつものように。

ギリッ!と力を込めて握ったバットは、初戦でホームランを打った幸運なバット。


大丈夫!

大丈夫!

大丈夫!


わたしは、お守りをギュッと握りしめて稜ちゃんの幸運を祈った。


そうしていると、ピッチャーが緊張した様子で大きく振りかぶり、第1球目を投げた。


パシッ!


ボールはグローブの中へ。

まずはどんなボールを投げるのかと初球を見送った稜ちゃん。

球種はフォークボール。

ストライクのランプが1つ灯る。


フォークも投げられるんだ、あのピッチャー。

バッターの前でヒュンと落ちるフォークは、一瞬消えたかと思うほどの錯覚。

さすがに上手い。

西ノ宮で先発を任されたピッチャーなだけはある。

稜ちゃん・・・・!

バットをぐるんと1回転させて、再び構え直すと第2球。


ストレート!


ブンッ!


緩急をつけたピッチングに稜ちゃんは大きく空振りさせられた。
 

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