白球と最後の夏~クローバーの約束~
稜ちゃんだって、どんなボールが来るのかを読んでいないはずはないんだ。
きっと、ここからファウルで粘り続けて、甘い球で一気に勝負に出るはず。
西ノ宮のピッチャーも、立ち上がりは良好のようだった。
ということは、今から暴投でデッドボールやフォアボールを出すとはなかなか考えにくい。
ここは稜ちゃんの選球眼と読み、思い切りのよさに賭けるほうがいい。
稜ちゃんはバットを見つめ、肩で1回大きく息をした。
・・・・そして構える。
西ノ宮ピッチャーは、すでに吹き出た汗をユニホームの袖でぬぐいながら、キャッチャーのリードに小さく頷いた。
第3球。
ストレート!
カキンッ!
少しタイミングがずれてファウルになったボールは、バックネットに高く跳ね上がった。
ボールはまだない。
ストライクが2つ。
“これだ!”ってボールが来るまで粘り続けるしかないよ、稜ちゃん・・・・!
「当てられるぞ、稜ー!」
「落ち着いてボール見ろー!」
「打てるぞー!」
「大丈夫だー!」