白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
ワンアウト。

掲示板にアウトのランプが1つ、赤々と灯ってしまった。


でも、稜ちゃんはそれほど悔しがっている様子ではなかった。

2番の井上君と打席を変わるときにすれ違いざまに何かを話していて、チラッと笑顔も見えたから。

なんだろう・・・・。

何かつかんだのかな、稜ちゃん。


「ドンマイ、稜!」

「ドンマイ!」

「まだまだ序盤、1回だ!」

「まずは向こうのピッチャーに目と体を慣らさねぇと、何も始まんねぇもんな!」


ベンチに戻ってきた稜ちゃんに、みんなが励ましの声をかける。

笹本先生は何も言わず、稜ちゃんと視線を絡ませて黙って頷いた。

やっぱり、稜ちゃんが5球の間で“何か”をつかんだのが分かるんだ、みんな・・・・。


「次は打てるぜ!」


みんなを見て自信たっぷりに言う稜ちゃんに、今のわたしの予測は確信に変わった。

次は大丈夫なんだね、って。





試合に目を戻すと、ツーストライク・ワンボールの場面。

井上君は初球から粘って粘ってファウルを選んでいた。
 

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