白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
井上君の粘りに精細を欠いたピッチャーは、3球目にボール。

そして、そのあとも2球、ボールが続いた。

ツーストライク、スリーボール。

一見井上君が追い込まれているように見えるけど、ボールが続く西ノ宮のほうが精神的には追い込まれているかもしれない。

よしっ!

このまま粘り勝ちだよ、井上君!


「粘れよ、井上ー!」

「ボールには手を出すなよー!」


稜ちゃんたちが柵から身を乗り出して応援している。

次はアウトコースか、それともストライクゾーンか・・・・。

フゥーッと気持ちを落ち着けるように息を吐いたあと、ピッチャーが振りかぶって投げた。


パシッ!


「ボール!」


やった!

フォアボールで井上君が塁に!

青雲の応援席からは拍手が巻き起こり、西ノ宮の応援席からは「あぁぁ〜・・・・」という声。


ワンアウト、一塁。

ここからはクリンナップ、攻め込むチャンスは大いにある。

次は秋沢君。

大丈夫、どんなに辛くても弱音を吐かなかった秋沢君だもの、やってくれる。
 

< 352 / 474 >

この作品をシェア

pagetop