白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
秋沢君が打席に立つときのテーマ曲が、頭まで響くかのようにガンガンと演奏されはじめた。

応援の声も大きくなる。

その中で、秋沢君は一つ、大きく深呼吸をしてから打席に入った。


「行けー、秋沢ー!」

「落ち着いて行けー!」


ベンチからはそんな声が飛ぶ。

きつくバットを握って構えた秋沢君に、また汗をぬぐった西ノ宮ピッチャーが1球目を投げる。


カキンッ!


「ファウル!」


主審が叫ぶ。

気を引きしめ直したピッチャーの球種はストレート、秋沢君は少し振り遅れてファウル。


「球にはついて行けてるぞー!」

「振り遅れんなー!」


毎回の試合で声をふり絞るみんなは、もう声がかすれてガラガラ。

稜ちゃんだって、喉を痛そうにしながら応援している。

それでも、声を出さずにはいられない。頭で考えるより先に声が出る。

決勝ともなれば、それは必至。


その声に応えるように大きく頷いた秋沢君は、構え直して2球目を待つ。


投げた!


ブンッ!


惜しいっ!
 

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