白球と最後の夏～クローバーの約束～

　
あともう少し高めの位置でバットを振っていたら、ロングヒットにでもなりそうな甘いコースのストレート。

本当に惜しいバッティング････。


『西ノ宮バッテリー、青雲の秋沢君をツーストライク、ノーボールと追い込みました！』


決勝戦を中継している地元アナウンサーが、そう実況している声が聞こえてきそう。

でも違う。

秋沢君はここからが粘れる選手、そう簡単に三振に倒れたりはしない。

ピッチャーが胸の前で構えると、一塁を気にしながらの３球目が投げられた。


カキーンッ！


「キャーーッ！キャーーッ！」


青雲の応援席はたちまち黄色い歓声に包まれ、応援団の太鼓はドドドドッ！と連打される。


「走れーっ！」

「行けー、行けーっ！」


ベンチでは、みんなが腕をぐるぐる回しながら叫んでいる。

今度も甘く入ったボールは、秋沢君の狙いすましたバッティングによって弾き返された。

低く低くグラウンドに土煙を起こしながら、飛びついたピッチャーのグローブを抜けて、セカンドのグローブをすり抜けて････。