白球と最後の夏~クローバーの約束~
「あ、いや。は、ははは・・・・」
試合中に相手の心配をするだなんて、なんて罰当たりなマネージャーなんだろう。
しどろもどろになりながら、わたしはその“心配”を誤魔化すように笑うしかない。
「人が良すぎなんだっつーの!」
すると、苦笑いのわたしを見て、稜ちゃんがニカッと笑う。
「・・・・へ?」
「だから、勝負の最中に余計な優しさは禁物だろ? しっかり俺らの応援だけしてればいいの、お前は!」
そう言って、稜ちゃんはアハハと笑う。・・・・あぁ、ばれてたんだ。
やっぱりね。
「うん、ごめん」
「いいって、別に。それがマネージャーなんだから」
「・・・・」
「ただ、次に俺が打席に入ったときは俺の応援だけしてろよ? 頼むから」
そして、稜ちゃんも苦笑い。
「わ・・・・分かった」
なんだろう・・・・。
こんなに大事な場面なのに、ほのぼのと会話なんかしていていいのかな?
そう思って稜ちゃんを見ると、もうすっかり試合に集中している凛々しい顔に戻っていた。