白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
今のは幻?

わたしの妄想?


というか、今までも試合中に稜ちゃんが話しかけてくることなんて一度もなかったのに、どうして?

今日の決勝は、始まったときから“何か”が違う気がする・・・・んだけどな。


「キャーッ!走ってー!」


そう考えていると、応援席から聞こえた鼓膜が破れるほどの声で一気に試合に引き戻された。

見ると、4番の上田君はヒットを放ち、二塁にいた井上君が必死の形相でホームベースに突っ込むシーンが・・・・!

おかしな妄想をしていたせいで、上田君のヒットは見ずじまい。

だけど、井上君がホームに向かっているということは、上田君はツーベースヒットを打ったってこと・・・・なの?

もうよく分からないけど、先制点は青雲に転がり込む可能性が大きいってことだ!


西ノ宮の守備は、慌てふためきながらもサードにボールを戻し、サードはキャッチャーに向かって取ったボールを投げる。

一方の井上君は猛ダッシュ!

ベースまでの距離は、あと7メートル、4メートル、1メートル!





・・・・ガツンッ!
 

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