白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「キャッ・・・・!」


わたしは、思わず短い悲鳴を上げていた。

激しいぶつかり合いに、どうしても口元を手で覆ってしまう。

本当は、目だって開けていられないくらいのすごい衝撃だった。


・・・・ホームベースの上で、井上君と西ノ宮キャッチャーが勢いのあまりに激突したんだ。

ぶつかった衝撃が強すぎて、2人ともすぐには起き上がれないほどの様子・・・・。

観客席からは、ぶつかったことに対するどよめきが起こっていた。

両校の生徒たちも、決勝戦を見に来た一般の観客たちも、それはみんな同じだった。


「アウト!」


もわもわと土煙が舞う中、主審が無情にもそう叫ぶ・・・・。


「・・・・アウトかっ!」

「ちくしょーっ!」


ベンチではみんなが柵を拳で殴って悔しがっている。

青雲の応援席は「あぁ〜・・・・」とがっかりした声で包まれ、西ノ宮の応援席は歓声と拍手。

絶好のチャンスだったのに、やっと1人、ホームまで戻ってこられたのに・・・・。

西ノ宮の返球のほうが井上君よりわずかに早かったんだ。
 

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