白球と最後の夏~クローバーの約束~
主審の「アウト!」を聞いて、痛みに顔を歪めながらゆっくりと体を起こした井上君。
井上君は、立ち上がるときに悔しそうに地面を1回叩いていた。
それでも、二塁三塁で得点圏。
秋沢君は三塁に駒を進め、上田君は二塁にいる。
ツーアウトでもう後がないけど、次は5番の大森君。
クリンナップは続いているんだ、打つことを信じて応援しなきゃ!
「ごめん。先制点のチャンス、無駄にしちまった・・・・」
ベンチに戻るなり、井上君は落ち込んだ様子でみんな言う。
「ドンマイ、ドンマイ!」
「大丈夫!まだまだ序盤なんだ、気にするな!」
だけど、落ち込んでいるのは井上君だけで、ベンチのみんなは温かい言葉で迎え入れた。
そうだよ、大丈夫だよ!
あの西ノ宮に初回からホームを脅かす試合運びができているんだもの、これからいくらでも得点のチャンスはあるよ!
「井上君、顔に土が付いてるからこれで落として?」
「サンキュ!」
「ううん」
みんなのおかげで、井上君の顔は明るい笑顔に戻っていた。