白球と最後の夏~クローバーの約束~
稜ちゃんがゆっくりと語る間に、すでに村瀬君はツーストライクと追い込まれている。
「村瀬ー!集中だー!ボールよく見ろー!」
稜ちゃんが、西ノ宮ピッチャーに果敢に挑む村瀬君に力の限りのエールを送る。
すると、その声が耳に入った村瀬君はベンチを見て力強く頷いた。
「村瀬だって自分のためだけじゃないんだ。大事な人のために、ああやってバットを振ってる」
「うん」
「俺の一番は、やっぱり・・・・」
「あっ、惜しいっ!」
稜ちゃんが話している途中だったけど、今、村瀬君があまりに惜しいバッティングをして。
だから、わたしの口からは思わずそう声が出てしまった。
結局、村瀬君はアウトになった。
ツーアウトで、ランナーはまだ1人も出ていない。
目まぐるしく打席が代わる。
次は7番の千葉君だ。
「なぁ・・・・」
「あ、ごめん。話の途中で・・・・」
「いや・・・・なぁ、マネージャー」
「ん?」
「“甲子園に連れてって”って言ってくんない?」
「えっ・・・・?」