白球と最後の夏~クローバーの約束~
話が脱線してしまったわたしを再び本題に戻した稜ちゃんは、急にとんでもないことを言った。
そして、ただ目を見開いて驚くばかりのわたしに、あの頃のキラキラした瞳を向けてこう言う。
「・・・・1回だけでいいから。そしたら俺、次はどんな球が来ても打てる気がする」
「・・・・」
8回裏。
ツーアウトでランナーはいない。
こんな状況なのに、わたしの胸は“好き”で高鳴っていく。
そんな瞳で見つめられると、涙がとめどなく溢れてきそうで・・・・。
小さな頃、稜ちゃんと指きりげんまんをして約束した甲子園。
その甲子園へ稜ちゃんが連れていってくれる・・・・?
“連れてって”
って、わたし、言ってもいいの?
自分たちのために戦ってほしい、そう思っていたわたし。
でも稜ちゃんは、誰かのために、仲間や先輩たちや先生や・・・・いろんな人たちのために戦っていると言った。
そして、わたしに“甲子園に連れてって”と言ってほしいと言っている・・・・。
いいの?
わたしが言ってもいいの?