白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
外野フェンスぎりぎりのところまで下がってやっと、ボールの軌道の真下に入ることができた。

でも・・・・。

ボールしか見ていないから、目の前にフェンスがあるなんて気づいてもない。

このままだとぶつかっちゃう!


「危ないっ!」


そう叫んで、わたしはとっさに目をつぶってしまった。

すると、一瞬の後、青雲の応援席からは「キャーッ!」という歓声が湧き起こった。

その声は喜びか、それとも・・・・。


恐る恐る目を開けると、そこには倒れ込みながらもグローブを高く突き上げているセンターの姿が!

フェンスに激突しても、しっかりボールはキャッチしていたんだ!


「アウトー!」


それを確認した審判は、声を高らかにアウトを叫ぶ。


やった!

やった!やった!


すでに二塁ベースを蹴っていたバッターは、悔しそうに下を向きながらベンチへ戻っていく。


この試合、これまでも何度もピンチはあった。

だけど、ここまでのピンチは、今のスリーベースヒットになろうかという打球のほかにはなかった。
 

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