白球と最後の夏~クローバーの約束~
ベンチで根岸君の姿を見守っていると、バットを持ってウォーミングアップをする稜ちゃんと目が合った。
すると、稜ちゃんは1歩ずつわたしに近づいてくる。
「ホームラン、お前のために絶対打ってみせるから。一生忘れられない夏にしてみせる」
真剣な目でそう言う稜ちゃん。
「・・・・うん。甲子園、必ず連れてってね。・・・・稜ちゃん」
もうわたし・・・・。
試合の興奮で自分が何を口走っているかなんて分からない。
頭がハイになっているんだ。
ただ、真っすぐに稜ちゃんを見つめてそう言っていた。
「ガキの頃に約束してたじゃん、必ず甲子園に連れていくって。俺にはこの四つ葉のクローバーがある。大丈夫」
「・・・・うん。そうだね」
「今日の試合で打つって決めてるんだ、俺」
「うん。頑張って。応援してる」
「サンキュ」
そう言うと、稜ちゃんはすっと試合のときの凛々しい顔に戻った。
「行ってくる」
「うん。信じてる」
そして、ネクストバッターズサークルへと歩いていった。