白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
ベンチで根岸君の姿を見守っていると、バットを持ってウォーミングアップをする稜ちゃんと目が合った。

すると、稜ちゃんは1歩ずつわたしに近づいてくる。


「ホームラン、お前のために絶対打ってみせるから。一生忘れられない夏にしてみせる」


真剣な目でそう言う稜ちゃん。


「・・・・うん。甲子園、必ず連れてってね。・・・・稜ちゃん」


もうわたし・・・・。

試合の興奮で自分が何を口走っているかなんて分からない。

頭がハイになっているんだ。

ただ、真っすぐに稜ちゃんを見つめてそう言っていた。


「ガキの頃に約束してたじゃん、必ず甲子園に連れていくって。俺にはこの四つ葉のクローバーがある。大丈夫」

「・・・・うん。そうだね」

「今日の試合で打つって決めてるんだ、俺」

「うん。頑張って。応援してる」

「サンキュ」


そう言うと、稜ちゃんはすっと試合のときの凛々しい顔に戻った。


「行ってくる」

「うん。信じてる」


そして、ネクストバッターズサークルへと歩いていった。
 

< 379 / 474 >

この作品をシェア

pagetop