白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
稜ちゃんはそこで言葉を区切り、1歩ずつわたしのほうに歩みを進めた。

わたしの体は少しも動かない。

ただ、近づいてくる稜ちゃんを目で追うだけ・・・・。

頭も一瞬で真っ白になって、何も考えられなくて、だから何も言えなかった。


「バースデーホームラン、決勝まで残れたら必ず打つって決めてたんだ。・・・・おめでとう、18歳」


わたしの前にふわりと立った稜ちゃんは、にっこりと微笑みながらそう言った。


「え・・・・誕生日・・・・わたしの・・・・うそ・・・・」


今日がわたしの誕生日だったなんて、これっぽっちも考えていなかった。

すっかり忘れていた。

稜ちゃんにそう言われるまで、気づきもしなかった。


驚きや感動や嬉しさ、幸せ・・・・。

いろんなものが一気に押し寄せてきて、それ以上うまく言葉がつながらない。

それでも心は正直で、自然と涙が浮かんでくる。


“おめでとう”
“声が聞こえてたんだ”


稜ちゃんのそんな言葉に、とめどなく涙が溢れてくる。


稜ちゃん、大好き・・・・。
 

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