白球と最後の夏~クローバーの約束~
───でも・・・・。
今のこの近すぎるほどの距離が、逆にどうしても近づけない距離に感じてしまう。
もともと近い距離にいる存在でもないけど、そう感じると・・・・胸の真ん中が苦しい。
稜ちゃんに嫌われるのが嫌で、ずっと隠し続けてきた気持ち。
稜ちゃんのことが・・・・。
“好き”
もしも今、大きな石が道路に転がっていて、暗くて気づかない稜ちゃんがつまずいてしまったら。
それで、バランスが崩れてハンドルがグラグラしたら。
・・・・今思っていることが口からポロッと出ちゃうくらいだよ。
それくらい、わたしは稜ちゃんのことが“好き”でたまらない。
無言のまま自転車を漕ぎ続ける稜ちゃんの背中に、わたしの妄想は膨らむ一方。
『好き』って言ったらどんな顔をするのかな? とか。
背中に寄りかかったらどんな反応をするのかな? とか。
“何の取り柄もないわたしなんかが、いつも中心にいる稜ちゃんと釣り合うわけない”
そう思っていても、嫌でも想像しちゃうんだ。つき合ってもいないくせにね。