白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
“好きすぎてどうにかなりそう”って思うの、わたしの人生で稜ちゃんが初めてだ。

“気持ちを伝えられなくても近くにいたい”って思うの、本当に稜ちゃんが初めてだ。

風に乗って香ってくる稜ちゃんのコロンの匂い。

それが、たまらなく恋しくて、たまらなく愛しい。


「マネージャー、寒くないか?」

「・・・・う、ううん」


そこまで妄想すると、突然の稜ちゃんの質問にわたしの目はパチンと覚めた。

稜ちゃんが“マネージャー”と言うたび、わたしの心はおもしろいくらいに踊るんだ。

なんとなくだけど稜ちゃんの“特別”になった気分に浸れるから。

だから、少しでもその気分に浸っていたくて、慌てて妄想をかき消した。


「そっか」

「うん」


暗い夜道に2人きり、自転車に揺られて帰る家までの道のり。

これほど着かないでほしいって思うことはないよ・・・・。


「ふふっ。ふはっ!」


えっ!? どうしたの!?

すると突然、稜ちゃんはなんの前触れもなく笑いだした。

肩を小刻みに震わせて、すごくおかしそうに。
 

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