白球と最後の夏~クローバーの約束~
それからわたしたちは、奥の草むらに座って徐々に沈んでいく夕日を眺めていた。
隣には、ずっと手を握っていてくれるわたしの愛しい人・・・・稜ちゃんがいる。
幸せ・・・・。
「なぁ、百合」
「ん?」
瞬きをするごとに沈むスピードを早める太陽、その中で稜ちゃんがゆっくりと口を開いた。
「・・・・実は俺さ、知ってたんだ」
「何を?」
稜ちゃんの声は、さっきまでの照れた感じじゃなかった。
「ん〜・・・・岡田に怒鳴られてるとき、百合がドアの向こうで聞いてたこと」
「え?・・・・うそ」
わたしの心には、あの雨の日の苦い記憶がよみがえる。
それと一緒に、今まで忘れていた“正直に打ち明けなきゃ”という思いもよみがえった。
「いっぱい泣かせたな。ごめん。でも俺さ、岡田に怒鳴られてよかったと思ってる」
「ごめん。聞くつもりじゃ・・・・」
「分かってるよ。気にしてない」
「・・・・うん」
わたしの手を握ってくれる稜ちゃんの手は、すごく優しい。
口調も優しい。