白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
泣きすぎてもう分からなくなっちゃったよ・・・・。


甲子園を決めたことに泣いて。

わたしのために打ってくれたバースデーホームランに泣いて。

そのあとのたくさんの“奇跡”にも、わたしはまた泣いた。


たくさん、たくさん涙を流した。

でも、今日の涙は全部うれし涙。

それだけは分かるよ・・・・。





「そろそろ落ち着いた?」


抱きしめる力を緩めながら、稜ちゃんが優しく聞く。


「ん。なんとか」


わたしは、涙で真っ赤になった目をこすりながら顔を上げた。

そこには、満点の星空よりも輝く稜ちゃんの顔。

愛しい愛しい稜ちゃんの顔・・・・。


「もう遅いし帰ろっか。きっと百合の家族もうんと心配してるはずだから」

「うん」

「試合の話、聞かせてやりなよ」

「うん。そうだね」





わたしたちは、星が降る中を手をつないで歩きだした。

夏草の匂いが心地いい。

草むらで鳴く虫の声が耳にいい。

時折サワサワと吹く風が、ほてった肌を撫でていく。
 

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