白球と最後の夏~クローバーの約束~
「一番? なんだろう・・・・ん〜」
すると稜ちゃんは、首をかしげてあれこれと考えはじめた。
「稜ちゃん、今の稜ちゃんの一番は“野球”でしょ? パッと出てこないとダメじゃん!」
そんな稜ちゃんに、わたしは強い目と口調でズイッと迫った。
・・・・だって、稜ちゃんの一番は野球であってほしいから。
「でも・・・・」
稜ちゃんは複雑な顔をしてわたしを見つめ返す。
「どこにも連れてってあげられないこと、稜ちゃんは“ごめんね”って思ってキスしてるの、わたし分ってるよ?」
「・・・・」
「稜ちゃんの一番は野球でなきゃダメなの。どんな稜ちゃんでも好きだけど、野球をしてる稜ちゃんが一番好きなんだから」
「うん。・・・・ごめん」
稜ちゃんは、いつになく強い態度のわたしにビックリしたみたい。
目を丸くしている。
「だからね、稜ちゃん。稜ちゃんは思いっきり野球をしていればいいの。わたしは稜ちゃんと一緒にいられるだけで幸せなんだから」
「うん」
「返事は?」
「はい」