白球と最後の夏~クローバーの約束~
「なんたって俺、百合の前じゃ絶対負けないっていうジンクスがあるからな」
「うん。そうだね」
そう。
わたしが応援する試合は、稜ちゃんは絶対負けないっていう不敗神話がある。
信じてる。
「失神するなよ?」
「ん? なんで?」
「ちゃんと見ててもらわないと困るよ。だって百合は・・・・」
そこで言葉を区切った稜ちゃん。
気恥ずかしそうにクイクイと指でわたしを呼ぶ。
そして、少しためらいながら小さくこう囁いた。
「百合は俺の天使だから。13年も想い続けてきた天使がこうして微笑んでくれるんだ。俺は天使の前じゃ負けない───」
2日前───・・
あの日、稜ちゃんが打ち明けてくれた“いいこと”とは、このことだった。
稜ちゃんを“男の子”として意識しはじめるようになったのは、わたしが先だとばかり思っていた。
稜ちゃんはわたしのことをずっと“幼なじみ”として見ていたとばかり思っていた。
そんなわたしに、とびっきりの甘い“衝撃”が走ったんだ。