白球と最後の夏~クローバーの約束~
わたしの耳元で“いいこと”を打ち明けて、ちょっと“俺様”な笑顔で笑ったあの日。
そのあと、稜ちゃんはサラサラと吹く夏風に身を預けるように草むらに寝転んだ。
そして、ゆっくりと流れる雲を目で追いながら、ぽつりぽつりと話してくれたんだ。
「あの引っ越しの日、初めて百合を見た瞬間から好きになった」
「そう・・・・だったんだ」
「うん。俺の初恋は、誰に言っても恥ずかしくない百合だよ」
「ふぇっ・・・・」
わたしはもう、涙が後から後から溢れてきて、まともに相づちも打てないくらいにしゃくり上げてしまった。
ただ、寝転んだ稜ちゃんの横顔を見つめていただけ・・・・。
「も〜、泣くなよ、百合。・・・・でな、それから13年の片想い。たぶん俺、百合より片想い歴長いと思うぜ?」
初めて知った稜ちゃんの初恋。
その相手がわたしで、5歳のときから13年も想ってくれていたんだって・・・・。
それを聞いたときの衝撃は、かなりのすごいものだった。
わたしより6年も前から・・・・そんなの全然知らなかったんだもの。