白球と最後の夏~クローバーの約束~
歳を重ねるごとに、稜ちゃんはどんどん遠い存在になっていった。
だからわたしは、見ているだけでいいと思っていた。
でも、稜ちゃんもわたしと同じように思っていたんだって・・・・。
「中学のあたりかな? 急に大人びていく百合が眩しくてさ。どんどん手の届かない存在になっていって、まともに口もきけなくなったんだ」
「そんな・・・・」
「ううん、百合は俺にとってすごく眩しい子だった」
「・・・・」
「だって俺、目も合わせられなくて、やっと口を開けても素っ気ない態度ばっかりで。見ているだけでいいって思う時期もあったよ」
そう言って、稜ちゃんは苦笑いを浮かべながらわたしの涙を拭ってくれた。
「だけど、岡田が百合を好きだって知ったとき、このままじゃダメだって思ったんだ」
「・・・・」
「だから、頑張って百合と話すきっかけを作ってた」
「稜ちゃん・・・・」
「だから、な? 百合はもう俺からは逃げらんない。逃げても追いかけて必ず捕まえる」
「ふふっ。逃げないよ・・・・わたしが逃げるわけないじゃん」