白球と最後の夏~クローバーの約束~
逃げるなんて、そんなもったいないことするわけないじゃん。
稜ちゃんにずっと捕まえていてもらいたいよ・・・・。
わたしだって、稜ちゃんをずっと捕まえていたい。
稜ちゃんが逃げたら、追いかけて追いかけて、必ず捕まえちゃうんだから。
「だろうな。百合は運動オンチだから、自転車に乗って逃げても捕まえられる・・・・ふはっ!」
「稜ちゃんの意地悪。わたしが乗れないこと、ずっと前から知ってるくせに・・・・」
「ごめんごめん・・・・ははっ!」
「バカッ!もう知らない!」
ぎゅぅーっ・・・・。
わたしがプンプン怒ると、稜ちゃんはすっと起き上がって抱きしめてくれた。
「ごめんってば」
そして、耳元で甘く囁く。
「・・・・ばか」
こんなに想ってくれる人、稜ちゃん以外にいないよ。
13年も片想いをしてくれていた稜ちゃん・・・・そんな稜ちゃんが誰よりも好きだよ。
わたしが一方的に好きなわけじゃなかったんだね。
稜ちゃんのほうが6年分、わたしを想ってくれていたんだね。