白球と最後の夏~クローバーの約束~
でも・・・・か、かわいいって!?
わたしの目は、とたんに稜ちゃんの背中に釘づけになった。
おまけに涙も途切れちゃった。
現金すぎるほど現金なやつ、それはわたしのこと。
たった今まで泣いていたのに、稜ちゃんの“かわいい”発言だけで涙が引っ込んじゃうなんて。
薄暗い中、広くて大きな背中しか見えないけど、そう言った稜ちゃんの声の感じが、ちょっと照れくさそうに聞こえた気がした。
きっとこれも、現金なやつの勝手な聞き間違いだと思うけど・・・・。
「ほ、ほんとに!?」
だけど、膨れ上がる嬉しい気持ちは止められなくて、思わず急き込んで聞いちゃうわたし。
「マジ、マジ。大好評!」
急に声のトーンが上がったわたしに乗っかるように、稜ちゃんは頷きながらカラカラッとした声で答える。
ん?
もしかして稜ちゃん、わたしをからかって楽しんでる・・・・?
稜ちゃんが何を考えているか、ちっとも分からない。
わたしはいつだって稜ちゃんのことしか考えていないのに。
・・・・なんか悔しい。