白球と最後の夏~クローバーの約束~
「ところで、なんで熱が出るまで薬飲まなかったんだよ? 寝不足気味だったんじゃねぇの?」
シャコシャコと自転車を漕ぎながら、普通の声の調子に戻った稜ちゃんが話題を変えた。
「あ・・・・四つ葉のクローバー、探してて」
「今から?」
「部員みんなのクローバー探してるから、今からじやないと間に合わないと思って」
「無理しやがって。朝早く探しに出てるんだろ?」
「う・・・・うん」
「だから寝不足に微熱なのか。体力ねぇくせに」
「ごめん・・・・」
「だからさ、なんで謝るんだ?」
「迷惑・・・・でしょ?」
「別に」
「・・・・」
稜ちゃんの声はだんだんムスッとしたトーンに変わってきて、特に最後の“別に”がすごく冷たく感じた。
嫌われたんだ、わたし。
練習の途中で居眠りするし、ヤカンはいつも落としちゃうし、きっと体重だって重いし・・・・。
また、涙がじんわり浮かんだ。
“今年こそは甲子園に”
稜ちゃんにとって、わたしの精一杯の応援は迷惑ですか───・・?