白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「ところで、なんで熱が出るまで薬飲まなかったんだよ? 寝不足気味だったんじゃねぇの?」


シャコシャコと自転車を漕ぎながら、普通の声の調子に戻った稜ちゃんが話題を変えた。


「あ・・・・四つ葉のクローバー、探してて」

「今から?」

「部員みんなのクローバー探してるから、今からじやないと間に合わないと思って」

「無理しやがって。朝早く探しに出てるんだろ?」

「う・・・・うん」

「だから寝不足に微熱なのか。体力ねぇくせに」

「ごめん・・・・」

「だからさ、なんで謝るんだ?」

「迷惑・・・・でしょ?」

「別に」

「・・・・」


稜ちゃんの声はだんだんムスッとしたトーンに変わってきて、特に最後の“別に”がすごく冷たく感じた。

嫌われたんだ、わたし。

練習の途中で居眠りするし、ヤカンはいつも落としちゃうし、きっと体重だって重いし・・・・。

また、涙がじんわり浮かんだ。


“今年こそは甲子園に”


稜ちゃんにとって、わたしの精一杯の応援は迷惑ですか───・・?
 

< 46 / 474 >

この作品をシェア

pagetop