白球と最後の夏~クローバーの約束~
 
「わたしのバカぁ・・・・」


洗った髪もろくに乾かさないままに、枕に顔を埋めて泣いた。


何やってんだろ、わたし・・・・。

もっともっと、かわいげのある子になりたいよ。

ねぇ、稜ちゃん・・・・。










そのまま寝てしまったらしいわたしは、ずーっと前の夢を見た。

それは、わたしがまだ稜ちゃんを“男の子”として意識する前の、ある夏の日のこと───・・。


「百合ちゃん、僕が高校生になるまで待っててくれる?」


夏の甲子園のテレビ中継を一緒に見ていたときだった。

ふいに真剣な表情になった稜ちゃんが、そう聞いてきたんだ。

わたしは、なんのことか分からなくて首をかしげた。


「高校の3年間のうちに、僕が必ず百合ちゃんを甲子園に連れてってあげるから。それまで待っててくれる?」


照れくさそうな、はにかんだ笑顔で、稜ちゃんは右手の小指をそっとわたしに差し出した。

答える代わりに、わたしは自分の小指を稜ちゃんの小指をに絡ませたんだ。
 

< 49 / 474 >

この作品をシェア

pagetop