白球と最後の夏~クローバーの約束~
「わたしのバカぁ・・・・」
洗った髪もろくに乾かさないままに、枕に顔を埋めて泣いた。
何やってんだろ、わたし・・・・。
もっともっと、かわいげのある子になりたいよ。
ねぇ、稜ちゃん・・・・。
そのまま寝てしまったらしいわたしは、ずーっと前の夢を見た。
それは、わたしがまだ稜ちゃんを“男の子”として意識する前の、ある夏の日のこと───・・。
「百合ちゃん、僕が高校生になるまで待っててくれる?」
夏の甲子園のテレビ中継を一緒に見ていたときだった。
ふいに真剣な表情になった稜ちゃんが、そう聞いてきたんだ。
わたしは、なんのことか分からなくて首をかしげた。
「高校の3年間のうちに、僕が必ず百合ちゃんを甲子園に連れてってあげるから。それまで待っててくれる?」
照れくさそうな、はにかんだ笑顔で、稜ちゃんは右手の小指をそっとわたしに差し出した。
答える代わりに、わたしは自分の小指を稜ちゃんの小指をに絡ませたんだ。