白球と最後の夏~クローバーの約束~
「ありがと、百合ちゃん!」
指きりげんまんした手をブンブンと勢いよく振る、稜ちゃんのそのときの笑顔。
なくなっちゃうんじゃないかって思うほど目を細くして笑う、そのときの笑顔。
その当時はわたしとほとんど変わらなかった、幼かった頃の稜ちゃんの手や指。
まるで昨日のことのようによみがえってくる。
懐かしいあの頃の記憶。
稜ちゃんの顔がちゃんと見れていた、まだ“恋”を知らなかったあの頃。
いつからだったのかな。
わたしが稜ちゃんを意識しはじめた頃からだったのかな。
少しずつ、少しずつ、稜ちゃんとの距離が離れていった気がする。
ご近所さんでも、毎日学校で会っても、練習試合に応援に行っても、やっぱり稜ちゃんとの距離は少しずつ離れていく。
わたしが好きにならなきゃよかったのかな。
稜ちゃんに“恋”を知ったわたしのせいなのかな。
苦しいな・・・・。
痛いな・・・・。
稜ちゃん、このときの約束、今でも覚えてる───・・?
ジリリリリッ
ジリリリリッ・・・・