白球と最後の夏~クローバーの約束~
わたしのプライバシーなんてお構いなしのお母さんは、ゴソゴソとバッグの中をあさる。
でも、それにはお目当てのものはなくて、わたしはベッドから起き上がったまま指示を出した。
「もー、元気なんじゃない!だったら自分で持ってってよ」
痺れを切らしたお母さんは、わたしに少し鬼になった顔を向ける。
「しょうがないなぁ、もう・・・・」
なんて言いながら、お母さんの脇を通ってデータブックが入ったバッグに手を伸ばす。
これもご近所さんっていう特権なのかな? まさか稜ちゃんが家に来てくれるなんて。
少しだけ、風邪が飛んでいった。
「あった、あった!」
「じゃあ、あとはよろしくね!」
わたしがデータブックを手に取ると、半分呆れたような顔でお母さんは部屋を出ていった。
わたしは、手に持ったデータブックを見ながら感動に浸る。
だって、わざわざ稜ちゃんがわたしを頼ってくれたんだよ?
感動しないわけないじゃんね?
それをギュッと胸に抱いて、急いで階段を下りていった。