初恋ラプソディ
「つ、付き合ってない。」

私は右手をフォークを持ったままブンブンと左右に振る。

「じゃあ、なんで奏先輩がわざわざ毎週、
美音ちに来るわけ?」

「美音に会いたくて?」

母が茶化すように口を挟む。

「お母さん! 違うでしょ。
余計なこと言わないで。
違うの。
奏先輩にEFアンサンブルに誘われたの。
だから、練習と打ち合わせに来て、そのまま
勉強を教えてもらってるの。」

「勉強も!?」

智恵が驚いたように言う。

「うん。
私、あんまり成績良くないからさ、ダブル
エントリーだと更なる悪影響が出そう
でしょ?
だから、アンサンブルに出る代わりに
奏先輩が勉強を教えてくれるって
言ってくれて… 」

「で?
美音は毎週、奏先輩と一緒にいて、何も
思わないの?」

「何もって?」

「好きだなぁとか、
もっと一緒にいたいなぁとか。」

「っ! そんなこと!!」

考えたこともない。

「ねぇ、おばさん、変だと思いません?」

「そうねぇ。
でも、それが美音だから、奏くんに頑張って
乗り越えてもらうしかないかな。」

「そっかぁ。
それにしても、奏先輩、大変ですね。」

「ま、仕方ないんじゃない?
美音を選んじゃったんだから。」

なんか、智恵とお母さん、2人で盛り上がってる。

「智恵、なんか忘れてない?
奏先輩は茜先輩と付き合ってるんだよ?
変な想像しないでよ。」

私がそう言うと、

「多分、付き合ってないよ。」

とあっけらかんと答えた。
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