初恋ラプソディ
演奏は順調に進んでいき、私たちの3番前になった。

私たちは、ステージ袖に移動する。


なんで?

どうしよう。

すっごい緊張してきた。

アンサンブルで緊張なんかしたことないのに。

「美音?」

「奏先輩、私、ダメです。
無理です。弾けません。」

どうしよう。手が震える。膝もガクガクする。

私が震える手を奏先輩に見せると、奏先輩は私の手をぎゅっと握った。

「大丈夫。美音ならできる。
間違えてもいい。失敗してもいい。
俺が美音に合わせるから。」

「でも!」

奏先輩、こんなに頑張ってきたのに…

私のせいで、失敗したら…

すると、奏先輩は、握ってた手を離して、私をぎゅっと抱きしめた。

え? 何!?

驚いた私は、奏先輩の腕の中で固まってしまった。

「美音なら、絶対に大丈夫。
今日は賞とか関係ない。2人で楽しもう!」

奏先輩の腕に包まれて、奏先輩の温もりと匂いを感じる。

押し当てられた奏先輩の胸は、私と同じくらいドキドキしてた。

そっか。

奏先輩も緊張してるんだ。

それでも私のためにこんな風に励ましてくれてる。

………うん。大丈夫。頑張ろう!

私は、奏先輩の腕の中から奏先輩を見上げる。

「もう大丈夫です。ありがとうございます。」

奏先輩は腕を解いて、私を解放する。

でも、その代わり、ぎゅっと私の手を握った。
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