不眠姫と腹黒王子~番外編~
宮side: 素
円がウキウキしながらドライヤーを準備していると、
洗面所に恵介が来て言った。
「俺コンビニ行ってくる。」
「えっ!外どしゃ降りだぞ。」
「今弱いし。
これ以上兄のイチャイチャ見てられるかよ。」
「いや、別に…」
なんかそんな風に言われると
照れるし申し訳ないな…。
「バイバイ、恵介。」
円が真顔のまま恵介に手を振った。
「うん…。また。」
「気を付けろよ。」
「兄ちゃん…」
恵介が目をそらしたまま気まずそうに俺を呼んだ。
「……ごめん…」
そう言い残して、恵介はバタバタと急ぎ足で出ていってしまった。
「恵介くん、可愛いね。いい子だね。」
円が柔らかな笑顔でそう言った。
「まぁな。バカだけどな。」
「宮にそっくり。」
「顔だけだろ。」
「可愛いところもだよ。」
「やめろ、アホ。」
円はよくこっぱずかしいことを平気で言う。
正常な俺はいつも動揺する。
「円も、恵介に迫られてちょっとは…
嬉しかったんじゃねぇの?」
うわ、言っちまった…
ダサ…
恵介がいるときは必死に我慢してたのに、
二人きりになるとすぐこれだ。
俺は円の前だと究極にカッコ悪くなる。
「う~ん…」
え、なんか悩むところ!?
不安になるんだけど…
「私、恵介くんの匂い嗅いで思ったの。」
「はぁ!?匂い!?
そんな至近距離に寄ったのかよ!」
「うん、流れで。」
あー、くそ。
やっぱ二人きりにするんじゃなかった。
「なんだよ、流れって…」
俺がイラついてそっぽを向くと、
円はそらした俺の顔の目の前に自分の顔を置いた。