時枝君の恋愛指南
無論これは、もしかしたら世にいう一般的な”秘書”というものとは、全く違うのだろうとも思う。
通常のスケジュール管理に加え、仕事上交渉する対象者の人物調査や相手の会社でのポジションや業務実績。
ありとあらゆる種類の情報収集や、専務が独自で入手したデータの解析とそこから推測できる様々な角度からの先の見通しまで…その業務量たるや、半端な量では無い。
でも、だからこその”やりがい”と、その先にある”成功”が、ある種、媚薬のような恍惚感が得られるのだろうことも、充分理解していた。
『ではやはり、彼にも同じような業務を?』
経験者として、あの業務量を一人でこなすのは、さすがに同情に値する。
『いや、実情、そこまでの業務は課せていない』
『?…課せてない、とは?』
『確かに、榊君もかなり優秀なのには違いないんだが…残念ながら、お前ほどの能力は期待できそうになくてな…結局、彼女には今、通常のスケジュール調整だけをやってもらってる』
『彼…女』
『ん?ああ、榊君は、女性だが?』
”何か問題でも?”とでも言いたげな視線を向けられ、思わず眉をしかめると、『野暮な詮索はするなよ』と窘められる。
専務の女性遍歴を鑑みれば、自分の反応は至極当然だ。
同時に、専務が自分に何を望んでいるのか、容易に想像できた。
『つまり、彼女が賄えていない部分の”秘書の業務”を、私が担え…と』
『さすが如月、話が早いな』
予想通りの業務内容が開示され、専務の言う”サポート”の意味を知るも、やはり依然解消されない疑問がひっかかる。
この不可解極まりない、袋の中身の件だ。
通常のスケジュール管理に加え、仕事上交渉する対象者の人物調査や相手の会社でのポジションや業務実績。
ありとあらゆる種類の情報収集や、専務が独自で入手したデータの解析とそこから推測できる様々な角度からの先の見通しまで…その業務量たるや、半端な量では無い。
でも、だからこその”やりがい”と、その先にある”成功”が、ある種、媚薬のような恍惚感が得られるのだろうことも、充分理解していた。
『ではやはり、彼にも同じような業務を?』
経験者として、あの業務量を一人でこなすのは、さすがに同情に値する。
『いや、実情、そこまでの業務は課せていない』
『?…課せてない、とは?』
『確かに、榊君もかなり優秀なのには違いないんだが…残念ながら、お前ほどの能力は期待できそうになくてな…結局、彼女には今、通常のスケジュール調整だけをやってもらってる』
『彼…女』
『ん?ああ、榊君は、女性だが?』
”何か問題でも?”とでも言いたげな視線を向けられ、思わず眉をしかめると、『野暮な詮索はするなよ』と窘められる。
専務の女性遍歴を鑑みれば、自分の反応は至極当然だ。
同時に、専務が自分に何を望んでいるのか、容易に想像できた。
『つまり、彼女が賄えていない部分の”秘書の業務”を、私が担え…と』
『さすが如月、話が早いな』
予想通りの業務内容が開示され、専務の言う”サポート”の意味を知るも、やはり依然解消されない疑問がひっかかる。
この不可解極まりない、袋の中身の件だ。