病んでる僕と最強の勇者たち
(僕が倒した……。

闇の魔王、ダーギルを……。

あのヘタレな但野明彦が、この世界で最強の賢者になって、闇の魔王、ダーギルを倒したんだ……)



ヘタレな僕が、最強の賢者になり、最強の敵を倒して、世界を救う。



それは、自分の世界の中に閉じこもっていた僕の心の中にあった大きな夢だ。



でも、そんな夢のような物語は僕の妄想でしかないと、僕はずっと思っていた。



だって僕の現実はファンタジーな世界でできていない。



僕は誰よりも弱く、誰よりも傷つきやすくて、自分の小さな世界をカチカチの硬い殻で覆って、自分の小さな世界を守るのが精一杯の男だったから……。



そんなダメな僕だったのに、僕の大きな夢はいつの間にか叶っていた。



僕はヘタレな但野明彦から抜け出して、フローラに最強の賢者という理想の自分にしてもらい、ついに最強の敵をも倒してしまった。



その感覚は、僕が好きなファンタジーアニメのラストシーンやロールプレイングゲームのラストシーンとは全然違っていた。



なぜなら、この世界の中心に僕がいたから。



僕はこの物語の世界の中心で、いつも大切な仲間たちと共に戦ってきたから。



僕の頭の中に、大切な仲間たちとのたくさんのシーンが思い浮かんだとき、僕の後ろから、リリーの明るい声が聞こえてきた。



「やったね、明彦君。

明彦がダーギルを倒したんだよ。

明彦君はものすごく強いんだよ」



そう言って微笑むリリーを見ていたら、僕はうれしくてリリーに微笑みを返していた。



僕たちの長い戦いがついに終わった。



僕はそう信じていた。
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