病んでる僕と最強の勇者たち
「賢者様がいるなら心強い。

お嬢さん、安心しなさい。

この賢者様が盗賊から大切な指輪を取り戻してくれるから」



いつの間にか街の人たちが僕と貴族風の若い女性の回りに集まっていて、僕は知らぬ間に、街の人たちから謎の期待を寄せられていた。



「そうだよ、お嬢さん。

賢者様っていうのは、誰もが憧れる上級職だ。

盗賊なんか簡単にこらしめてくれるよ」



僕たちを取り囲んでいる別の人は、無責任にそんなことを話し出した。



その街の人たちの声を聞いて、僕の心は叫んでいた。



(おい、ちょっと待ってくれ。

僕があんなに強そうだった大男の盗賊と、一戦交えなくちゃいけないの!?)



僕の心の叫びを無視するように、僕たちを取り囲んでいるまた別の人が、僕にこう話しかけてきた。



「賢者様、どうかこの子を助けてやってくれないか?

この子が泣いているのを、オレたちは見ていられなくて……」



突然、舞い降りてきた強制的なミッションに、僕はドギマギしながら辺りを見回していた。



すると、この街のたくさんの人たちが、僕たちを取り囲み、賢者である僕に期待しているのが伝わってきた。



この状況ではもう後には退けない。



僕は立ち上がり、街の人たちの方に目を向けると、場の空気にのまれながら、街の人たちに宣言していた。
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