病んでる僕と最強の勇者たち
「わかりました。

僕があの盗賊からこの人の指輪を取り戻します!」



僕がカラ元気を出してそう宣言すると、街の人たちは盛り上がり、僕はもう後には退けなくなっていた。



「さすがは賢者様だ。

オレたちとはやっぱり違うぜ!」



街の人の間違っている指摘に、突っ込みを入れる余裕もないままに、僕は盗賊を追って走り出した。



もしも盗賊から指輪を取り戻さなかったら、僕の評判は落ちるだろうか?



なぜだか、そんなネガティブなイメージばかりが僕の頭の中に浮かんでくる。



異世界転生したとはいえ、人はそんなに変われない。



僕は元々、心を病んでる但野明彦だ。



そんな僕があの強そうな盗賊に勝てるだろうか?



僕には元々、自信なんて一ミリもない。



僕は大きな道を右に曲がると足を止め、あの盗賊と戦うために自分の魔法を試してみようと思い始めた。
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