あくまで死んでます
声が聞こえる。
ことよ、友達ができたのか。
さすがよのう。
ことよ、そなたは聡明じゃ。
一体誰に似たのかな?
ことよ、嫌なことは嫌と言え。
誰にも己を傷つけさせるな。
ことよ、泣かないでおくれ。
その美しい顔を曇らせないでおくれ。
ことよ、もういいのじゃ。殺せ。
己に害なすものはすべて消してしまえ。
ことよ。ことよ。ことよ。ことよ。
ああ、愛しいことよ。はやく、はやく……!
「ことよさま!!!」
「っ、」
息が上がる。
突然の覚醒に脳がくらりと揺れた。
「目を覚まされましたか!」
「……福、ちゃん」
「ええ、福でございます!
ことよさま、倒れられたのですよ。
すぐに南天さまをお呼びします!」
福ちゃんはぺちぺちと足音を立て大声で南天さんを呼びながら出て行った。
どうやら、うなされていたようだ。
汗を拭おうと額に手をかけたところで、ひやりとした肌に怖気付く。
バクバクと心臓が早鐘を打つ感覚を覚えたが、そっと胸に手を当てても鼓動は感じない。
ああ、そうだった。
私、死んだんだった。
「娘。具合は?」
チリン、と。耳のすぐそばで鈴の音がなった。
「あ……う、うん、大丈夫。
うなされていたみたい。体調は悪くないわ」
「そうか。まぁ過労のようなものだろう。
まだ少し顔が白い。このまま少し休め」
「ま、まって!」
出て行こうとした南天さんの手を咄嗟に掴む。
が、先ほど彼に聞かされたことを思い出し、慌てて手を払った。
「……大丈夫だ。おそらくあの力はあなた自身の身が脅かされたときに発するもの。
俺にはなにも及ばない。
手を引いて歩いたのを忘れたか?」
「そっ……か。言われてみればそうね……」