ゾーイ・テイラー〜温もり、のちにキス〜

「どこに行くつもりなんだ？危ないことをする気か？」

支度をするロネを見つめ、ゾーイが訊ねる。その目は心から心配している様子だ。ロネはゾーイを抱き締める。

「危険だったらゾーイにきちんと言うよ。買いたいものがこの町にはないんだ。だから、首都まで行ってくる」

「そうか。ロネなら魔法であっという間に行けるな」

ゾーイが微笑み、ロネはホッとする。リリスの首都はここから何百キロも離れているが、魔法使いにとっては移動に問題のない距離だ。

「今日は私がラックスに絵本を読み聞かせてみる」

ゾーイがそう言い、町の本屋で買った童話を手にした。ロネは「頑張れ」と言い、ゾーイの頭を優しく撫でる。

そして二人はいつものように森へ向かった。

ラックスと雪合戦や歌を歌ってたくさん遊んだ後、ロネはほうきに跨った。瞬間移動よりほうきでの移動の方が体にかかる負担は少ない。

「ゾーイ、ラックスをお願い」

「大丈夫。私が何があっても必ず守る」