ゾーイ・テイラー〜温もり、のちにキス〜
ロネとゾーイは真剣な眼差しを送り合う。それをラックスは不思議そうに見つめた後、「お兄ちゃん、行ってらっしゃい」と手を振った。ロネの胸に癒しがあふれていく。

「……行ってきます!」

そう言い、ロネはゾーイとラックスに手を振る。ラックスは元気よく、ゾーイは少しぎこちなく手を振ってくれた。

ロネは嬉しさを感じながら空へと飛び立つ。手を振ってくれている二人の姿はどんどん森の木々に埋もれていった。

「夕方までには帰らないと……。それまでに見つかるといいな……」

ロネはほうきに力を込める。すると飛ぶスピードが早くなった。まるで風と一体化したかのようだ。

「アネモス!」

ロネが呪文を唱えるとまたスピードが早くなる。ロネは風の強さに目を閉じた。

普通の人ならば一日以上かかる距離を、ロネはたったの一時間で移動してしまった。



リリスの首都であるベールドは、首都なだけあって人が多く行き交い、おしゃれなお店もたくさん並んでいる。

「ここならきっといいものが買えるね!」
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