ゾーイ・テイラー〜温もり、のちにキス〜

「着いたね」

「ああ。とりあえず宿を探さないとな」

列車が駅に到着し、ロネとゾーイは荷物を手に列車を降りる。北国ということもあってヒヤリと冷たい風がロネの頬を撫でる。

「ゾーイ、寒くない？」

ロネがそう訊ねると、ゾーイは「少し……」と体を震わせた。ロネは微笑み、ゾーイの手を優しく握った。ゾーイの頰が赤く染まる。

二人が出会った頃、ロネとゾーイの身長はあまり変わらなかった。しかし、今はロネの方が少し背が高い。

二人で旅を始めて六年。たくさんの国を巡り、多くの試練を二人は乗り越えてきた。

「この国でどんな冒険ができるか楽しみ」

ロネがそう言うと、「前の時みたいに無茶はしないでほしい」とゾーイがロネを見つめた。リリスに来る前の国で、ロネはドラゴンの中でも凶暴な種類のドラゴンと大怪我を負いながら戦ったのだ。

「わかってるよ〜」

ロネはそう言ったものの、ゾーイは心配げな目をしたままだ。ロネは立ち止まり、ゾーイの唇にそっと自分の唇を重ねた。