伝えたい。あなたに。〜番外編〜



『もう離せなくなりそう。』


その言葉と同時に、ゆうかがじたばたと動き出す。


『いや、だめ。』


と火照った顔で必死に何かを訴えている。


『どうしたの?』


『だめ!今はだめ!』


3度目のだめ、で何がだめなのかを悟った。
一生懸命離れようと、もがいているのが面白くて、逃すまいと腕に力を込める。


すると、諦めたのかなすがまま身体を預けている。
ゆうかの少しばかり荒い呼吸と、心拍を感じながら、


『俺はちゃんと理性的だよ。もうゆうかは大人って言ってたじゃん。』


『いや、違う。違う違う。』


と抱きついたまま、首を横に振ってぎゅっと服を握っている。サラサラの髪にそっと触れてやると、さらに体に力が入るのがわかる。


『嘘だって、なんもしないよ。病み上がりなのに。』


『病み上がりじゃなかったらどうするの?』


そう言って、真っ直ぐな目でこちらを見つめてくる。


『どうしてほしいの?』


途端に動揺して、目を泳がせる。
少し考えて、


『泰志のものになる。』




< 59 / 107 >

この作品をシェア

pagetop