伝えたい。あなたに。〜番外編〜



表情が崩れないように、ギュッと奥歯を噛み締めた。気まずい空気が流れ、広瀬先生が口を開く。


『ゆうかちゃん、あの看護師と何かあった?』


『あの看護師?』


『さっきここに来た人、見なかった?』


『見ました。』


鼻がツンとして、とっさに天井を見上げた。
瞬きの回数が増える。溢れないように、溢れないように。


なんだか、そんな自分が惨めでならなかった。


情けなかった。


お腹が痛かったことなんて忘れて、広瀬先生に礼も言わず、部屋を出た。


もう誰にも泣いている姿を見せるわけには行かなかった。廊下にある物の影で、目が腫れないように雫を拭き取る。


(はぁ。おちつかないと。)


『大丈夫?』


どこか聞き覚えのある声に振り向くと、
看護師長の市川さんがいた。


『はい。』


笑顔を作って答える。


『ゆうかちゃん、ちょっときて。』


< 73 / 107 >

この作品をシェア

pagetop