伝えたい。あなたに。〜番外編〜
表情が崩れないように、ギュッと奥歯を噛み締めた。気まずい空気が流れ、広瀬先生が口を開く。
『ゆうかちゃん、あの看護師と何かあった?』
『あの看護師?』
『さっきここに来た人、見なかった?』
『見ました。』
鼻がツンとして、とっさに天井を見上げた。
瞬きの回数が増える。溢れないように、溢れないように。
なんだか、そんな自分が惨めでならなかった。
情けなかった。
お腹が痛かったことなんて忘れて、広瀬先生に礼も言わず、部屋を出た。
もう誰にも泣いている姿を見せるわけには行かなかった。廊下にある物の影で、目が腫れないように雫を拭き取る。
(はぁ。おちつかないと。)
『大丈夫?』
どこか聞き覚えのある声に振り向くと、
看護師長の市川さんがいた。
『はい。』
笑顔を作って答える。
『ゆうかちゃん、ちょっときて。』