伝えたい。あなたに。〜番外編〜


『はい、目つぶって、たくさん息吐きながら
体の力抜いていくよ。』


めまいが酷い時に山瀬先生がしてくれたように、
そっと額に手が置かれる。


『まだ力入ってるよ。』


と、トントンと肩を叩かれる。


『もっとゆっくり呼吸できるよ。もっとゆっくり。
そう。』


次第にこわばっていた身体がほぐれて苦しさが
いくぶん良くなった。


少しして、市川さんが涙を拭きなさいとティッシュを渡しながら、"さすが広瀬式ね"と言った。


『広瀬式?』


『うん。患者さんを落ち着かせる鬼よ。』


(そんな別名があるなんて知らなかった。)


『市川さん、大袈裟ですよ。山瀬先生に連絡してもらえますか?』


はいはい、と言いながら市川さんが電話を片手に部屋を出る。


『広瀬先生、ありがとうございます。この前も、、』


『うん。最近、山瀬先生キャパオーバーしてるからね、もしかしたら、良くないかもって。』


『ここのところ、いつも疲れてるし、そんな感じはしてました。』


『ゆうかちゃんもキャパオーバー気味だったでしょ?』


『それは、私の元々のキャパが少なすぎるので。』


『そんなことないと思うよ、万全の体調でなくても、よく頑張れてる。自信持って、山瀬先生にもどんどんぶつけていいと思う。そのほうが喜ぶよきっと。』


(広瀬式、、すごいな。話してるだけで心が軽くなる。)


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