君との想い出が風に乗って消えても(長編)



 それは僕と加恋ちゃんが恋人同士になったということ。


 僕と加恋ちゃんが恋人同士ということはクラスメートには言っていない。


 特に加恋ちゃんとそういう話をしたわけではないけど、お互い自然に言わないようにしていた。


 ……だからだと思う。



 昼休みのこと。


 男子たちが加恋ちゃんに話しかけている。


 ただ話しかけているわけではない。


 なんか……親しく……ではない。

 ……馴れ馴れしく‼


 僕は男子たちと話している加恋ちゃんの方を見た。


 加恋ちゃんは愛想笑いだとは思うのだけど……笑顔で男子たちと話していた。


 その様子を見て僕の心は激しく乱れた。


 僕の加恋ちゃんが他の男子たちと笑顔で話している。


 加恋ちゃんの笑顔を他の男子たちも見ている。


 僕は、それがたまらなく許せなかった。


 だからといって今、僕が他の男子たちに「加恋ちゃんは僕の彼女だ‼」なんてそんなことを言う勇気がない。


 僕は他の男子たちと笑顔で話している加恋ちゃんをただ見ているしかなかった。


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