君との想い出が風に乗って消えても(長編)
体育の授業は男女別だからだろう。
その時間をチャンスだと思って、男子たちが僕に花咲さんのことを質問攻めしてきたのだと思う。
でも、いくら男子たちが花咲さんのことを訊いてきても僕が答えるようなことは何もない。
だから。
「え……」
僕は、そう反応するしかなかった。
でも、それではきっと、あのしつこい男子たちが納得するわけはないかなと思った。
「『え』じゃないよ。で、花咲と、どんな話をしたんだよ」
案の定。
男子たちは納得していなかった。
「どんな……って……」
そんなことを訊かれても……。
僕はそう思ったけど、それを男子たちの前で口に出すことはしなかった。
そう言っても、たぶん同じことの繰り返しだと思ったから。
「なにもったいぶってるんだよ」
そう言ってくる男子たち。
「別にもったいぶってなんかないよ」
もったいぶってなんか……。