君との想い出が風に乗って消えても(長編)
「楽しみだなぁ」
「優くんは野外合宿楽しみなの?」
「うん、野外合宿に行く場所って自然がきれいなところでしょ。僕、それが楽しみで」
とは言ったけど……。
実は……。
僕は、野外合宿そのものはそんなに楽しみにしているわけではない。
だけど、唯一、自然がきれいなところに行けるということだけは楽しみにしている。
「わたしも楽しみ」
加恋ちゃんもそう言ってくれた。
「昼間もきれいだと思うけど、きっと夜もきれいだよ。住宅街と違って星ももっとたくさん見える」
「そうだね」
「……僕ね……実は野外合宿に行ったら、ちょっとやってみたいことがあるんだ」
僕は、だいぶ前から野外合宿に行ったらやってみたいと思っていたことがあった。
「どんなこと?」
「夜、みんなが寝ているときに、こっそりと部屋を抜け出して星空を見に行こうと思うんだ」
「え⁉」
「もちろん簡単なことではないと思うよ。先生たちも夜の見回りをしているからね」
「……優くん……」
「うん?」
「……大丈夫なの……?」
心配そうにしている、加恋ちゃん。