君との想い出が風に乗って消えても(長編)
そう、あの言葉……。
「『来年の今頃は、ここにはいない』……」
「…………」
加恋ちゃんは無言のまま下を向いてしまった。
「……加恋ちゃん……」
「…………」
「……教えて……加恋ちゃん……」
加恋ちゃんは時期が来たら言うと言っていたのに、僕は不安で不安でたまらなくて加恋ちゃんに訊いてしまった。
「……優くん……」
加恋ちゃんは困っている様子だった。
僕は、また加恋ちゃんのことを困らせてしまっている。
この場合の加恋ちゃんの困っている様子は、見ていると、とても辛い。
……でも……訊かずにはいられなかった。
「……今は……言えないの……」
「……加恋ちゃん……」
「……でも、わたしは優くんと一緒にいたい。その気持ちに噓はないの」
下を向いていた加恋ちゃんは顔を上げて僕の方を見た。
「加恋ちゃん……」
「わたしは優くんのことが好き、大好きなの」
加恋ちゃんは身体ごと僕の方に向けて抱きついた。
「僕も大好きだよ、加恋ちゃん」
僕も加恋ちゃんのことを抱きしめた。