君との想い出が風に乗って消えても(長編)



 そう、あの言葉……。


「『来年の今頃は、ここにはいない』……」


「…………」


 加恋ちゃんは無言のまま下を向いてしまった。


「……加恋ちゃん……」


「…………」


「……教えて……加恋ちゃん……」


 加恋ちゃんは時期が来たら言うと言っていたのに、僕は不安で不安でたまらなくて加恋ちゃんに訊いてしまった。


「……優くん……」


 加恋ちゃんは困っている様子だった。


 僕は、また加恋ちゃんのことを困らせてしまっている。

 この場合の加恋ちゃんの困っている様子は、見ていると、とても辛い。

 ……でも……訊かずにはいられなかった。


「……今は……言えないの……」


「……加恋ちゃん……」


「……でも、わたしは優くんと一緒にいたい。その気持ちに噓はないの」


 下を向いていた加恋ちゃんは顔を上げて僕の方を見た。


「加恋ちゃん……」


「わたしは優くんのことが好き、大好きなの」


 加恋ちゃんは身体ごと僕の方に向けて抱きついた。


「僕も大好きだよ、加恋ちゃん」


 僕も加恋ちゃんのことを抱きしめた。




< 190 / 261 >

この作品をシェア

pagetop