君との想い出が風に乗って消えても(長編)



 年が明けた。



 昨年、加恋ちゃんが転校してきた日に言っていた『来年の今頃は、ここにはいない』の年が来てしまった。


 ……今年……。


 今年……本当に加恋ちゃんはいなくなってしまうのだろうか……。


 でも、いなくなるってどういうふうに……?


 ……転校……?


 いなくなるといったら、そういうことしか思いつかない。


 それ以外、考えられない。

 ……というか、考えたくない。

 それ以外のことなんか……。



「優くん……?」


 ……‼


 加恋ちゃん……。


「どうしたの? なんか元気がないみたい」


「そ……そんなことないよ。元気いっぱいだよ」


「本当? それならよかった」


「ありがとう、加恋ちゃん」


 加恋ちゃんは本当にやさしいな……。


 そうだよ、せっかく加恋ちゃんと一緒にいるときに考え込むのはやめよう。


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