君との想い出が風に乗って消えても(長編)



「あぁ~、バレンタインデー」


 先生は思い出したかのようにそう言った。


「でもね、今は授業中だから授業に集中しましょうね」


「……はい……」


 僕は、おとなしく返事をすることしかできなかった。


「はい、みんなも静かに」


 先生は生徒たちにそう言った。



 * * *



 授業が終わり、部活も終わって加恋ちゃんとの帰り道。


 やっぱり僕は、そわそわしていた。


 僕は、そわそわしながら加恋ちゃんの方をチラッと見た。


 加恋ちゃんはいつも通りの様子で歩いていた。


 こんなにもそわそわしているのは僕だけなのかな……?


 僕は少ししょんぼりしてきた。


 すると加恋ちゃんが僕の様子に気付いた。


「どうしたの? 優くん」


 やさしく訊いてくれる加恋ちゃん。


「……うん……」


 僕は曖昧な返事しかできなかった。


 そうしているうちに僕と加恋ちゃんの帰る分かれ道がきた。


「……じゃあ……また明日ね、加恋ちゃん」


 僕は、しょんぼりしたまま加恋ちゃんにそう言った。


 そして僕は自分の帰る方向へ足を一歩前に出した。


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