君との想い出が風に乗って消えても(長編)



 ……加恋ちゃん……。


 加恋ちゃんは僕の正面に回り込んだ。


 僕は、僕の正面に回り込んだ加恋ちゃんと目が合った。


 加恋ちゃんのきれいな顔がはっきり見える。


「優くん」


 加恋ちゃんの純粋できれいな瞳。

 その瞳で見つめられた僕は全身の動きを止められているように……。

 ……⁉

 ……って、本当に止められている……⁉


「加恋ちゃん……これは一体……?」


「優くん……優くんがわたしのことを好きって言ってくれて本当に嬉しかった」


「加恋ちゃ……」


 ……⁉


 ……こ……声が出ない……⁉


「そして……優くんと……恋人……同士……になることができて本当に幸せだった」


『だった』……って、なんで過去形……?


「……でも……本当は……わたしは優くんと恋人同士になってはいけなかったの……」


 ……え……⁉


『恋人同士になってはいけなかった』……って、どういうこと……?


「最初、優くんと会ったとき、そのときは優くんとほんの少しでもお話ができればいいと思っていたの」


 ……え……?


< 234 / 261 >

この作品をシェア

pagetop